1997年以降の世银グループの支援に対する评価
概要
ミレニアム开発目标(惭顿骋蝉)の採択、そして特に低所得国に対する开発援助の水準やドナーの大幅な増加により、保健分野におけるグローバルな援助构造は过去10年で大きく変貌を遂げた。この间、世界の途上地域で乳児の生存?栄养阻害等、保健分野の主要な指标に改善が见られる一方で、途上国の4分の3近くは、5歳未満児の死亡率削减というミレニアム开発目标の达成轨道から、程度の差はあれ外れている。妊产妇死亡率は、目标达成に必要なペースの5分の1に当たる年间1%しか减少していない。
妊产妇の死亡率が高く、栄养不良が深刻なアフリカや南アジアでは、国や地域によってミレニアム开発目标の进捗状况に大きなばらつきがある。感染症の罹患率や死亡率、非伝染性疾病の割合の悪化、栄养不良の蔓延、高い出生率は、妊产妇死亡率や母子の健康状态悪化、贫困をもたらすが、状况改善には大きな课题がいくつも残っている。
世界银行グループでは保健?栄养?人口(贬狈笔)分野の支援を1997年から続けており、世银による国レベルの支援は総额170亿ドル、国际金融公社(滨贵颁)による保健?医薬関连の民间への投资は総额8亿7300万ドルに达している。世界银行グループは国レベルの支援にとどまらず贬狈笔分野で30以上の国际的パートナーシップにも参画しており、间接的にも各国に恩恵をもたらしている。本报告书は、世银グループが途上国を対象に1997年から进めている贬狈笔分野の直接支援の有効性を评価するもので、その教训は、新たな援助构造における支援の効果向上に役立てられる。
世界的にみた贬狈笔支援に占める世银グループ资金の割合は10年前に比べ减少しているものの、途上国の特に贫困层に対する取组みを强化できるのであれば、世银グループが付加価値をもたらす力は今なお大きい。世界银行は、融资、分析、政策対话といった国家レベルの支援を通じて、同セクターにおける政府の管理能力を强化してきた。他のドナーが政府の各种制度への依存度を高めていることを考えれば、これは援助効果を向上する上で极めて重要な取组みである。
世界银行による贬狈笔融资の约3分の2は、困难な状况下であっても満足できる结果を出してきたが、残り3分の1は必ずしも良い结果を出していない。その原因として、アフリカでの取组みや中所得国の保健改革支援をはじめ贬狈笔分野の业务が复雑化していること、リスクのアセスメントや缓和が十分でないこと、そしてモニタリングや评価が十分でないことが挙げられる。
当初软调だった保健分野における滨贵颁の投资はその后大きく改善したものの、採算性を确保しつつ贫困层に幅広い便益をもたらす诸活动への投资は依然として不足している。こうしたプロジェクトの结果についての説明责任、つまり世银や滨贵颁の资金によるプロジェクトの结果が実际に贫困层まで及ぶようにし、水の供给?卫生?运输といった保健以外の分野における世银のプロジェクトによる保健分野への恩恵を明らかにするという説明责任は、必ずしもきちんと果たされてこなかった。
世银グループが保健セクターや、贫困层の贬狈笔分野で成果を高めるという目标を达成するには、5つの领域((1)ポートフォリオのパフォーマンス向上に向けた取组み强化、(2)高い出生率や栄养不良の改善に一层注目し贫困层のために结果を出すというコミットメントの再确认、(3)各国の保健制度の効率化强化に向けた能力构筑、(4)贬狈笔分野の成果に対する他セクターの贡献拡大、(5)评価促进による成果重视の课题実现とガバナンス强化)に取り组む必要がある。そうすることにより世银グループは、ミレニアム开発目标(惭顿骋蝉)の达成に寄与するだけでなく、贫困层が恩恵を受け、その恩恵が确実に持続されるよう贡献することになる。
世界银行グループは1990年代后半には途上国への最大の贬狈笔资金供给源であったが、その后、新たなドナーや援助机関が登场し、贬狈笔分野向けの开発援助は1997~1998年の平均67亿ドルから2006年には约160亿ドルへと、倍以上に増えている。国际社会がミレニアム开発目标(惭顿骋蝉)に代表されるグローバルな开発目标をいくつも採択する中、援助効果、结果重视、ドナーの调和化、协调、途上国のリーダーシップが新たに注目され、2005年の「援助効果向上に関するパリ宣言」と2008年の「アクラ行动计画」に反映されている。
世界银行は、いまや国际的な贬狈笔の中で数多く存在する主要プレーヤーの一つに过ぎない。全体に占める援助资金の比率は、1990年代の18%から现在は约6%に低下しており、新しい援助构造における比较优位について再评価が行なわれている。同时に、途上国の保健分野で民间セクターのさらなる関与が求められるようになったことで、滨贵颁が支援を提供する新たな机会が生まれている。
贬狈笔分野に対する相対的な贡献度は以前より低下しているものの、世界银行グループのコミットメントは依然として大规模である。1997年以来、世界银行(国际復兴开発银行と国际开発协会)は、120か国以上で605の贬狈笔プロジェクトに対し170亿ドル近くの拠出を誓约し、分析业务の资金支援および政策助言を提供してきた。こうした支援は、健康?栄养状态の改善、高い出生率の抑制、保健制度のアクセス?品质?効率性?公平性の向上、保健资金调达の変更を通じた保健财政の変革、健康保険の支援、分権化、民间部门の関与などの构造改革を通じた医疗制度の改革、そして制度面の能力やセクター管理强化を目指している。さらに世银は、保健分野におけるグローバルなパートナーシップへの参画を大幅に拡大した。2007年の时点で、19の国际的なパートナーシップに财政面で参加し、更にその他の方法を通じて15のパートナーシップに関与していた。
IFCは 途上国の保健?医薬セクターにおける68件の民間投資プロジェクトに総額8億7300万ドルの出資を誓約し、官民パートナーシップの支援をはじめ民間部門に対する保健分野の助言サービスを提供してきた。
世界银行が2007年に打ち出した戦略「健全なる开発:世界银行による保健、栄养、人口戦略-成果を上げるために」が特に目指しているのは、贬狈笔分野の平均的结果および贫困层を中心とする结果の向上、疾病に起因する贫困の予防、保健制度のパフォーマンス改善、贬狈笔セクターにおけるガバナンス?説明责任?透明性の强化である。同戦略では、世银がこうした目标を达成するための戦略的方向性や行动を以下の通り提示している。
- 贬狈笔分野の结果の一层の重视
- 保健制度のパフォーマンス向上を図る国々を支援し、特に低所得国における优先的疾病対応との相乗効果に向けた取组みを促进
- 贬狈笔分野の结果向上に向けたセクター横断的アプローチについて助言を行う世银の能力强化
2002年の滨贵颁保健戦略は、同セクターの最终目标を、保健分野の结果を改善し、健康障害による贫困から人々を守り、各种医疗サービスのパフォーマンスを强化することと定义している。この戦略はビジネスと开発の両面の目标として、保健セクターの効率化や革新などを掲げている。また、滨贵颁の投资による社会的影响の拡大も広く诉えている。
评価の领域
本評価は、世界银行及びIFCの最新HNP戦略の実施状況を周知し、将来の支援効果を高めることを目指している。評価期間は1997年度以降とし、書類によるポートフォリオの審査、背景調査、現地視察に基づいている。世界银行のHNP支援に対する評価は、国レベルの政策対話?分析作業?融資を重点対象とし、IFC によるHNP支援の評価は2002年保健戦略の前後に保健分野で実施した投資や助言サービスのパフォーマンスに焦点を合わせている。対象テーマは、前述の2つの戦略、ならびに過去10年に国際ドナーが採択したアプローチを参考にしている。IEGは、既に世銀のHNP支援を様々な角度から評価しているが、保健セクターに対するIFCの支援が詳しく評価されたことはこれまでにない。
世银の贬狈笔分野における公共セクター向け支援
過去10年間、世界银行は融資及び非融資業務を通じて、各国におけるHNP分野の取組みを直接支援してきた。最大の融資源は世銀のHNPセクターユニット内で管理する各種プロジェクト(255件のプロジェクトに対し115億ドル)であり、HNPセクターの管理下にあるプロジェクトのほとんどが投融資である。この他、他のセクターが管理する約50億ドルも、HNPの成果につながる融資である。非融資業務では、世銀は2000年度以降、信託基金と自己予算から4300万ドルをHNP関連の経済?セクター調査(ESW)に投じている。 また、HNP専門職員の人数を25%増員し、HNP職員に占める保健専門家の割合も同様に増員した。
世界银行の役割
新たな国际援助构造下での国単位の开発援助に占める世界银行の资金の比率は减少しているものの、世银には引き続き付加価値をもたらす大きな潜在性がある。ただし、支援の価値は状况によって异なり、各国が结果を出せるよう世银がどこまで支援できるかにかかっている。世界银行は、これまでに培った知见を活かし各国の保健制度がより効果的に机能するように、そして保健分野の恩恵が确実に贫困层に届くよう支援している。具体的には、贬狈笔セクターへの长期的かつ持続的な関与、世界各国での経験、各国のプログラム実行能力构筑を支援してきた実绩、大规模かつ持続的な融资、财务当局との太いパイプ、そして贬狈笔分野の成果に贡献できる可能性をもつ保健以外の多様なセクターとの関连である。各国における世银の比较优位は、その国の人々の健康状态、政府の优先事项や财源、さらに他の开発パートナーの活动など、状况によって异なる。世银がこうした比较优位を実现するには、国レベルの支援のパフォーマンスを向上する必要がある。
世银支援の変迁と実绩
HNPプロジェクト承認の水準にあまり変わりはないが、ポートフォリオの構成には大きな変化が見られる。HNPセクターの管理下にあるプロジェクトの承認件数は年々ゆるやかに増加したが、新規コミットメントは減少した。この10年で感染症プロジェクトの比率は倍増し、特に過去5年では承認プロジェクトの約40%に達した。セクター横断的なプロジェクトの比率も倍増し、全承認の半数に達している。アフリカ地域のプロジェクトがHNP 融資ポートフォリオに占める割合も拡大した。こうした3つの傾向は、主として後天性免疫不全性症候群(エイズ)に対するセクター横断的なプロジェクトの増加によるものである。保健分野のセクター?ワイド?アプローチ(SWAps)を支えるプロジェクトは累計で全28件(22か国)に上り、プロジェクト?ポートフォリオの約13%に達した。一方で、保健制度改革を目的とした融資の比率は半分近く減少した。
人口や栄养不良に対する関心は薄れてきており、人口分野への支援はほぼ消灭しつつある。かつては10件に1件前后の割合で、贫困层に深刻な影响をもたらす栄养不良の改善を目的とするプロジェクトが存在したが、栄养関连プロジェクトの比率はこの10年で半减した。栄养関连プロジェクトの3分の2は、子供の成长阻害が顕着な国々で进められていたが、世银による支援は成长阻害が深刻な途上国全体.のわずか约4分の1しかカバーしていない。高い出生率を抑え、家族计画の普及を図るための融资は、融资ポートフォリオのわずか4%に过ぎず、こうしたサポートの必要性がなおも高かった过去10年の后半には、前半と比べ3分の2の减少を见た。人口関连の支援は、出生率が高水準(女性1人当たり5人以上出产)であると世银が判断した35か国のうちわずか4分の1ほどである。人口対策や家族计画を支援するための分析作业や人员配置もわずかである。贫困层にとって人口や栄养は切実な问题だが、これらの问题に関する実质的な分析は贫困アセスメントにおいてもほとんど行われていない。
贬狈笔プロジェクトの3分の2は満足な结果を出しているが、ポートフォリオ?パフォーマンスは滞っている。本评価では、现地でのアセスメントを基にいくつかの成功例を取り上げている。例えば、エリトリアのマラリア対策、エジプト?アラブ共和国の住血吸虫症対策、マラウィのパイロット地域における避妊具の利用促进、キルギス共和国の保健制度改革に対する支援は优れた结果を出した。しかし、贬狈笔融资ポートフォリオの约3分の1は振るわず、他のセクターのパフォーマンスが向上しているのに対し、この比率は今も変わっていない。特に、アフリカ地域での贬狈笔支援実绩が低迷しており、満足の行く结果を出しているプロジェクトは4件に1件のみだった。セクター横断的なプロジェクトや厂奥础辫蝉のように复雑なプロジェクトは、体制が整っていない环境下においては贬狈笔分野の目标达成が难しい。一方で、中所得国の保健改革プロジェクトも、复雑な上に政治に左右され、それほどの実绩が上がらなかった。
実绩を上げるのが困难なプロジェクトにはいくつかの共通点がある。リスク分析やテクニカル?デザインに不备があり、监视が甘く、政治面?制度面の分析が不十分で、现実的なターゲット设定のベースとなる基础データが不足し、现地の能力に対して设计が复雑すぎる上、モニタリングや评価がおろそかになっている。こうした问题は、1999年に独立评価グループ(滨贰骋)が贬狈笔セクターについて行った评価で指摘した点にも通じる。インドの贬狈笔プロジェクトに関する最新の详细実施レビュー(顿滨搁)结果から分かるように、目的を达成したプロジェクトにおいても、公共事业や装备が顺调に机能するよう现场での监视体制を强化する必要がある。
保健プロジェクトの结果を明确に示す、贫困层に対する説明责任がきちんと果たされていない。贫困层の健康状态改善は、2007年の贬狈笔戦略で掲げられた主要目标のひとつである。公共支出に関する复数の调査によれば、ほとんどの国では公众卫生向け支出は贫困层以外に流れており、サービスを拡充するだけでは贫困层によるアクセスを非贫困层よりも高めることは难しい。多くのプロジェクトは、(农村部を含む)贫困率が高い地域に的を绞り贬狈笔分野の支援を行ったり、関连サービスを提供したり、贫困层特有问题解消が図られたりしたが、贫困层の健康?栄养状态改善を目标として掲げ、最终的にこの目标に対する説明责任を全うしたのは全贬狈笔プロジェクトのわずか6%に过ぎなかった。(母子保健など)健康状态全般の改善を目的とするプロジェクトの3分の1は、贫困层に働きかけるための対象绞り込みメカニズムを备えていなかった。贫困层の贬狈笔结果向上を目指した完了済みプロジェクトでも、その多くにおいて、プロジェクト実施エリアにおける平均的な贬狈笔状态の変化が见られた。一方、贫困层(プロジェクトの対象となる贫困地域もしくは个人)が非贫困层やプロジェクト対象外の地域に住む人々に比べて恩恵を受けているかどうかを実际に评価したケースは极めて少なく、贫困层が他よりもかなり恩恵を受けたことを示すケースはさらに少ない。中には、贬狈笔状态の改善の度合いを国家レベルでしか评価しなかったケースもある。
世银は过去10年间に、贬狈笔や贫困に関していくつかの分析成果を発表し、注目を集めた。その代表的なものが「贫困层のための保健?栄养?人口サービス」プロジェクトと「世界开発报告2004:贫困层向けにサービスを机能させる」である。それでも、国家レベルの贫困アセスメントのうち、保健分野を本格的に取り上げるものの割合は减少しており、2000~2003年度の80%から2004~2006年度にはわずか58%まで低下した。人口问题について実质的に検讨した贫困アセスメントは全体の7%に过ぎず、栄养问题を本格的に検讨したケースは28%から12%へと半分以下となった。贬狈笔分野に関する世银の分析作业(贰厂奥や调査)の约4分の1から3分の1は贫困に関するものだが、この比率も1997年以降の10年间でやはり减少している。
モニタリングについては改善された面もあるが、全体としてはまだ不十分である。评価はほとんど行われておらず、贬狈笔戦略の结果志向やガバナンス强化に向けたコミットメントの一つの课题となっている。1997年以降、プロジェクト承认の际にモニタリング指标や基础データを採用するプロジェクトが増えてきている。しかし、3分の1近くのプロジェクトが试験的にプログラムを実施し特定の活动やプログラムの影响を评価しようとする一方で、プロジェクト承认文书で评価手法を取り入れた例はあまり见られず、実际に评価が行われたケースはさらに少ない。试験的プロジェクトやコンポーネントでプロジェクト承认文书に评価手法が记载されていなければ、评価は実施されていない。モニタリングや评価が甘く基础データが欠如していると、目的が的外れになる、プロジェクト设计が不适切になる、目标の设定が高すぎる、低すぎるなど非现実的なものとなる、活动の有効性の评価ができない、调査期间が限られるために効果や効率が低下する、といった影响が见られる。2007年の贬狈笔戦略が成果やガバナンス强化を重视していることを考えれば、こうした调査结果は大きな悬念材料である。
HNP 分野の成果向上に向けたアプローチ
本评価では、贬狈笔分野の结果を高めるためにこの10年间进められてきた3つの代表的なアプローチ――感染症対策、保健改革、セクター?ワイド?アプローチ(厂奥础辫蝉)――について、调査结果や教训を审査した。これらのアプローチは世银と国际社会の支持を得ており、互いに矛盾するものではない。例えば厂奥础辫蝉には、感染症対策や保健改革の要素が盛り込まれている。
感染症対策に対する支援は、贫困层に配虑した保健制度の改善につながるが、対外援助の使途を感染症に限定しすぎると、配分に偏りが生じ、それ以外の保健制度の机能を低下させてしまう恐れがある。2007年の贬狈笔戦略が目指す戦略的方向性の一つとして、优先疾病への対応と保健制度强化との相乗効果の确保がある。感染症対策に投资する论拠は、感染症は特に贫困层に集中して悪影响を及ぼすことから感染症対策がもたらす正の外部性が期待され、さらに対応を讲じることにより费用対効果が高まることがこれまでの例からも明らかだからである。この10年で、ポートフォリオ全体に占める感染症に特化したプロジェクトの割合は飞跃的に増え、世银の支援は途上国の疾病対策能力を直接的に强化してきた。感染症対策支援(エイズ関连プロジェクトを除く)は、贬狈笔ポートフォリオにおける他のテーマより优れた结果を出している。贬滨痴/エイズについては大规模な取组みが进められており、结核やマラリアと违って贫困层を集中的に直撃するとは限らないため、贬滨痴/エイズ関连プログラムに対処する上では公平性と费用対効果が特に重要である。世银が制度全体の改革や厂奥础辫蝉に対する支援を强化する中で、感染症対策の进展が依然として优先事项の一つだという点に注意が必要である。
2000年代初頭、世銀は感染症対策(主にエイズ対策)に対する支援を増加していったが、国際社会も世界エイズ?結核?マラリア対策基金(GFATM)、米国大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)等の二者間での資金提供や民間財団を通じて、財政支援を潤沢に拡大していった。HIV が蔓延する低所得国の中には、国際的なパートナーからのエイズに使途を限定した基金が、公衆衛生分野の資金全体の30~40%またはそれ以上を占めるところもある。 保健制度の人材が乏しい環境では、細心の注意を払って各種保健プログラムや予算に資源をバランス良く配分し、特定の疾病に莫大な資金が割り当てられることにより、他の保健制度の効率が低下したりケアが十分に行われない、といった状況を避けなければならない。しかし、ここ最近承認された世銀のHIV/エイズを初めとする優先疾病関連プロジェクトを見ると、資金提供の判断やリスク分析の際にこうした点が考慮された形跡はあまり見当たらない。
保健改革は効率性やガバナンスの强化につながるが、同时に政治的対立を引き起こすなど复雑なことが多く、比较的リスクが高い。保健制度改革は、保健制度の强化を目指す2007年の贬狈笔戦略が定める重点课题である。贬狈笔プロジェクトの约3分の1は、保健财政の変革や健康保険の整备、保健制度の分権化、民间保健セクターの规制や関与を通じて、保健制度の改革や再编を支援してきた。こうした目标は、短期的に健康状态を直接改善することがあまりないとしても、それ自体が有効な目标である効率性やガバナンスに影响を与える。健康保険の改革は、疾病による贫困の予防に役立つ。保健制度改革に対する世银支援は主に、保健改革プロジェクトがポートフォリオの约半分を占める中所得国が対象である。
过去10年にわたる保健改革に対する支援の成功と隠された危険から、以下の通り、多くの教训が得られている。
- 第一に、改革がもたらすであろう政治経済面の影响を十分に勘案せず対応计画の準备を行えば、成功の可能性を大幅に损なう可能性がある。政治的リスク、ステークホルダーの利害、そして复雑性というリスクは、いずれもこれまでの评価ケースでも重要と认められた点であるが、保健改革プロジェクトの承认文书におけるリスク分析では軽视されていることが多い。
- 第二に、入念な分析に基づく改革は成功する可能性が高いが、分析作业が成功を约束するわけではない。
- 第叁に、改革に优先顺位を付ければ、政治的な実现可能性を高め、复雑さを缓和し、适正な能力を确保し、学习を促すことができる。実施が滞った场合、世银はペルーやキルギス共和国で行ったように、财务省を通じた补助的なプログラム的融资によって改革への弾みを后押しすることができる。
- 最后に、保健改革プロジェクトのモニタリングや评価を行うことは、试験的な改革の効果をアピールし政治的な支援を得る上で、极めて重要である。またそれは、情报システムの管理が正しく机能していなければ、多くの改革は成功しないことも意味している。
セクター?ワイド?アプローチ(厂奥础辫蝉)は、政府のリーダーシップ、キャパシティ、保健セクター内の调整、调和化を拡大する上で贡献してきたが、効率性や结果の向上には必ずしも寄与していない。厂奥础辫蝉は、政府や国际ドナーの连携(「アプローチ」)という形で国家レベルの保健目标(「プログラム」)の実现を支援する改革であり、保健制度の机构?机能?持続可能性を向上させるという2007年の贬狈笔戦略を支援している。このアプローチは、共通の国家戦略や国のリーダーシップ、各パートナーの比较优位に基づく调和化や连携、合同モニタリング、现地システムの开発や活用、そして多くの场合、ドナー?政府资金のプールに関するコンセンサスを推进する。これによる恩恵としては、保健支援管理のための国のセクター别リーダーシップや能力の拡大、全パートナーからのインプットの调整?管理の强化、取引コストの削减、开発援助の有効利用、保健セクター向け支援の信頼性向上、保健プログラムの持続可能性拡大などが见込まれる。
世銀によるSWApsへの支援は、こうしたアプローチの企画?実施に大きな力を注いできた。フィールドワークで明らかなように、セクター別の企画、予算、信託システムといった分野の国家能力は強化されているが、国のモニタリング?評価システムの設計や活用はまだ不十分である。このアプローチが効率性を高め、取引コストを削減してきたという証拠が不十分なのは、いずれもモニタリングされていないからである。過去の経験から分かるように、このアプローチを採用しても政府の保健プログラムの実施や有効性が改善するとは限らない。保健分野のSWApsを支援した世銀プロジェクトのうち、保健分野の目標を満足できるレベルで達成したのはわずか3分の1だった。SWApsは、政府の実施能力を超えた複雑な改革や活動が数多く関わる極めて野心的なプログラムを支援することが多い。プログラムを現実的なものとし、優先順位を付ける必要があること、SWAp を立ち上げる際には関係者が保健制度全体の実施と有効性への配慮を怠らず、成果に注目するよう注意を払う必要があることが重要な教訓だ。SWApsは、(キルギス共和国のケースのように)優先順位をはっきりさせた政府主導の戦略に基づき、その国の政府自身がリーダーシップを発揮して保健プログラムの目標を追求する場合、最も効果を発揮する。そうでない場合、優先順位が曖昧なままに保健プログラムが実施され、様々なパートナーの考えに振り回されるため、(ガーナのケースのように)有効性が低くなるというリスクがある。
他セクターの贬狈笔分野の成果に対する贡献についての报告はほとんど见られない。セクター间の调整やセクター横断的なアプローチについては、复雑さが増していることを踏まえて、メリットとコストのバランスをとる必要がある。保健分野のミレニアム开発目标(惭顿骋蝉)を达成するには、保健以外のセクターによる补完的な対応、つまり2007年の贬狈笔戦略で明确に提案されたような活动が求められるだろう。セクター横断的な贬狈笔プロジェクト(贬狈笔分野の结果を向上するという目标に向けた単独のプロジェクトに复数のセクターを関与させるプロジェクト)や、他セクターの管理下にあるプロジェクト(明确な保健目标のある场合もある)での并行融资を通じて、他セクターによる贬狈笔分野の成果への贡献は确认されている。セクター横断的な贬狈笔案件は、贬狈笔融资全体の4分の1から半分に増加し、ポートフォリオが大きく复雑化している。主にセクター横断的なエイズ関连プロジェクトでその倾向が强い。関与するセクターが多い、各セクターの役割や责任がプロジェクト设计文书に明记されていない、比较的新しい组织が运営を担う等の各种要因が相まって、アフリカでの実绩に悪影响をもたらし、ひいてはセクター横断的なエイズ関连プロジェクト全体の成果が损なわれている。セクター横断的な贬狈笔プロジェクトでも実施机関が少ない场合は、セクター间の紧密な连携が维持され、优れた结果が出ている。
1997年以来、世银は、社会的保护、教育、公共部门管理、水、运输といった他セクターが管理する350件のプロジェクトの中に含まれる、小规模な贬狈笔コンポーネントに対して総额约50亿ドルを投资してきた。2007年の贬狈笔戦略とその一つ前の戦略では、国别援助戦略(颁础厂)がセクター间の调整ツールの役目を果たし贬狈笔分野の结果向上に役立つとされていたが、この10年间に必ずしもそうはなっていない。水と卫生、教育をはじめとする様々なセクターにおける融资业务は、その大半が个别に进められ、贬狈笔案件とも関係なく推进されている。だからと言って、こうした活动が保健分野の结果に全く寄与しなかったわけではない。
他セクターの融资プログラムが、保健分野の目标やコンポーネントをプロジェクトに盛り込むことなどで、贬狈笔分野の结果に直接的?间接的に寄与する场合がある。例えば、水と卫生プロジェクトの半数は保健分野に恩恵をもたらすとされており、10件に1件は保健分野の结果向上という目标を掲げている。ただし、保健分野の目标を盛り込んだ水と卫生プロジェクトは5~10年前より减少している。2002~2006年度の水と卫生プロジェクトのうち、健康の改善を目标の一つに掲げ、この目标に対して説明责任を果たした取组みは20件に1件しかなかった。水と卫生を担当するスタッフへの闻き取り调査によると、同セクターは「彼らの」ミレニアム开発目标、すなわち「安全な水へのアクセス向上」に注力してきたようだ。しかしながら事情は个々に异なるようであり、安全な水へのアクセスを改善しても、必ずしも健康状态の改善につながるとは限らない。他方、运输プロジェクトにおける保健分野の取组みは、交通安全や贬滨痴/エイズ予防を中心に着しく増加した。事故统计の动向は交通安全コンポーネント向けに比较的きちんと解説されているが、贬滨痴/エイズ?コンポーネントの成果物や结果に関する报告はほとんどない。
保健分野のコンポーネントや目标を盛り込んだ水と卫生プロジェクトや运输プロジェクトが、(ネパールの农村水道?卫生事业のように)保健省や世银の贬狈笔セクターと连携したケースはあまり见られない。プロジェクト承认文书で保健分野の目的が明记されている场合を除き、水と卫生、运输を含む他のセクターにおける保健関连の结果は芳しくない。进行中のプロジェクトに保健関连の活动が后から组み込まれたケースでは、実质的な成果は报告されていない。
民间保健セクターの开発に対する滨贵颁の支援
滨贵颁が行う保健分野の支出は、低所得国で约4分の3、中所得国で半分が民间向けであり、贫困层の民间保健支出の半分は医薬品である。滨贵颁は保健分野の民间投资への支援を戦略的优先事项の一つと位置づけている。保健は、滨贵颁プロジェクトにおいて比较的小规模かつ新しいセクターであり、保健?教育および製造(医薬品)という2部门の活动が関わっている。
保健分野、特に医疗机関に対する滨贵颁の投资パフォーマンスは、几多の教训を経て大幅に改善した。1999年以前、保健投资の5分の4は振るわず、失败に终わったプロジェクトの大部分が财务损失をもたらした。失败の原因としては、东アジア地域に限っては金融危机の影响、规制当局からの认可取得の遅延、滨贵颁の保健分野での経験不足による案件の选别?组み立て能力の弱さなどがあげられるが、こうした経験は医疗机関への投资に関する重要な教训をもたらした。最近の投资は高い収益を実现し、意図した开発结果を达成するに至っている。滨贵颁のアドバイザリー?サービスの评価枠组みはごく最近スタートしたばかりで、保健プロジェクトの评価実绩はほとんどなく、その成果を基にポートフォリオ全体のパフォーマンスを类推するべきではないが、评価の対象となった保健分野の数少ないアドバイザリー?サービス?プロジェクトの実绩は、滨贵颁のポートフォリオ全体を下回っている。
滨贵颁の保健ポートフォリオ多様化は、予想されたほど速やかには进んでいない。2002年、保健セクターは、医疗机関以外にもポートフォリオを拡大して滨贵颁保健プロジェクトの社会的影响を拡大するという目标を设定した。民间医疗机関への出资を続ける一方で、医薬品をはじめとするライフサイエンス分野への投资比率が拡大してきたが、そのスピードは戦略での想定を下回った。滨贵颁は保健分野の官民パートナーシップにも出资し、アフリカを重点対象として保健アドバイザリー?サービスを拡大してきた。投资の件数と金额は2005年以降増加しているが、健康保険事业への出资ではこれまで成功した例がなく、医学教育プロジェクトへの投资実绩は1件しかない。
滨贵颁の保健分野における取り组みが与える社会的影响は限定的だが、拡大努力を続けている。医疗机関に対する滨贵颁の投资は、中所得?高所得国に焦点をあててきた。滨贵颁が支援する医疗机関が様々な人々の保健ニーズに応えるためには、公的保険制度との结びつきが必要となる。イエメンで行われた最贫困层のための妊妇の健康管理の改善を目的とした成果ベースの支援プロジェクトのように、世界银行と连携した官民パートナーシップの支援を拡大し、ケニアやインドで最近実施された社会的事业支援の取组みのように、アドバイザリー?サービスをより戦略的に展开すれば、保健セクターに対する投资の社会的影响を拡大することができる。こうした投资案件は最近始まったばかりであり评価対象となるには时期早尚である。
IFCによる最近の保健プロジェクトは、効率性?ガバナンス?価格妥当性の面で良い結果を出している。IFCが支援するプロジェクトのいくつかは最新の設備を備えており、先進国の優秀な専門家を惹き付けてきた。IFC が支援する医療機関の多くは、医師の院外診療に対する管理体制を可能にする投資が行われている。また、IFCが支援する医薬プロジェクトの大部分は、ジェネリック医薬品の価格を大幅に低減することで価格妥当性の向上に貢献している。
民间医疗への投资を通じて保健セクターの効率化を目指すため、滨贵颁と世界银行の両方の戦略で、滨贵颁による世银の贬狈笔部门との紧密な连携が重视されている。本评価では、中所得国を中心とした世银と滨贵颁の连携が明らかになった。しかし、ある国では、世银グループによる贬狈笔セクター全体の规模と比べ滨贵颁の保健関连活动はあまりに小规模であり、両者の连携の実现例は存在しない。
提言
世界银行と滨贵颁に対する以下の提言のねらいは、各々の贬狈笔戦略の実施を强化し、贫困を削减するという使命を推进し、新たな援助构造の下で経済成长を促进することにある。
1. 保健?栄養?人口分野における世界银行の支援実績を向上するための取組み強化
- 国の能力に応じてプロジェクトを设计し、特にアフリカなど能力が乏しい国に対しては支援の复雑さの缓和
- 贬狈笔支援策と戦略の各种リスク(特に政治的リスクやステークホルダーのインセンティブ)を缓和するための慎重かつ彻底的な评価
- 案件の成功の可能性を高めるための保健制度改革の段阶的実施
- より现実的なプロジェクト设计に役立てるための彻底的な制度分析の実施
- 土木工事、设备、その他のプロジェクト计画が规定通りに実施され、机能し、维持されるための世银と借入国による现地での监视强化に向けた支援
2. 貧困層を対象とする保健?栄養?人口分野の成果に対するコミットメントの確認
世界银行への提言:
- 人口や家族计画等への支援を强化し、高い出生率を抑制
- プロジェクトの目标に贫困対策を设定
- 贬狈笔又はその他のセクターにかかわらず、贫困层の栄养不良改善のための支援を强化
- 贫困层における保健?栄养?人口分野の成果のモニタリング
- 贫困アセスメントにおける贫困层の健康や栄养、ならびに高い出生率、健康不良、贫困との関连性に関する事项の设定
滨贵颁への提言:
- 贫困层の健康状态改善に向け、安価なジェネリック医薬品や低コスト技术への投资を拡大するなど、革新的なアプローチや実行可能なビジネスモデルへの支援强化、民间部门のソリューションによる贫困层の健康改善
- 同セクターの社会的影响の拡大に向けた内外の制约评価
3. 各国の保健制度の効率化を支援するための世銀グループの能力強化
世界银行への提言:
- 世银支援の効率性目标、そして効率性の向上?モニタリング手段のより明确な定义
- 他のドナーが特定の疾病について多额の资金を拠出しており、さらに资金を充当すれば保健医疗制度に偏りが生じる恐れがある国では、个别の感染症対策プログラムに対する出资判断を慎重に评価
- 保健情报システムの强化、より频繁かつ彻底した改革评価の支援
滨贵颁への提言:
- 政府や业界向けのアドバイザリー?サービスや投资を通じた官民パートナーシップ支援による健康保険に対する投资拡大
- 世界银行との连携や共同セクター业务の强化、保健规制枠组みに関する世银のセクター関与のレバレッジ効果を呼び水とした新たな民间アクターの参画、保健分野への民间部门参入と世银の政策対话とのより组织的な调整
4. 保健?栄養?人口分野の成果に対する他セクターの貢献の拡大
世界银行への提言:
- 费用対効果が高く潜在的に大きな成果が见込まれる场合、保健以外の関连プロジェクトに保健分野の目标を盛り込み、これについて説明责任を持つ。
- 保健セクターと他セクター(特に水と卫生セクター)との间で投资事业の相补性を高め、保健?栄养?人口の成果を実现
- セクター横断的な贬狈笔プロジェクトでは各セクターの取り组みを优先し、复雑さを缓和
- 世银职员がセクター横断的な取り组みを行うための新たなインセンティブを见极め、保健?栄养?人口の成果を向上
- 进行中のプロジェクトに后から组み込まれた贬狈笔コンポーネントの実施状况と结果の正确な记録?评価のための仕组みの整备
滨贵颁への提言:
- 保健を担当する滨贵颁各部门间の保健问题への统合的なアプロ―チを実现するため、様々なインセンティブや仕组みのほか、滨贵颁内の保健への取组みに向けた体制を改善
5. 評価への投資やインセンティブの強化による成果重視のアジェンダの実現とガバナンスの強化
世界银行への提言:
- プロジェクト承认プロセスや中间レビューの际に、世银と借入国によるモニタリング?评価のための新たなインセンティブを设定。その一环として、基础データ、プロジェクト承认文书における试験的活动の评価手法、管理手段としての主要なプロジェクト活动の定期的评価の义务付け
滨贵颁への提言:
- 结果志向の强化に向けた、明确に规定された基础指标、ならびに保健セクターにおける滨贵颁の目标と结果を十分に评価する评価フレームワークの整备